野菜の未利用品の活用・微粉末加工について
SDGsや環境保全の考え方が浸透し、「食品ロス」を減らす取り組みが積極的におこなわれています。食品を扱う工場で発生する加工残渣や生産地など廃棄される規格外品・廃棄部位について「加工を加えることで何かに活用できないか」と廃棄以外の活路が見直されています。当社でもお客様の工場で発生したバイプロ品を微粉砕加工し、パウダー品として納品し、お客様の工場で再利用いただいています。
野菜の未利用品や廃棄品を活用することのメリット・注意点についてご紹介していきます。
【加工例:廃棄されていたブロッコリー軸のパウダー化】
当社の旭川工場が所在する北海道は、さまざまな野菜が生産されています。出荷基準を満たさない規格外品や葉や根っこの部分など出荷前に取り除かれ廃棄される部分がたくさんあり、現地ではその廃棄部分の活用化が課題となっています。
一例として、タンパク質が豊富な野菜として人気の高いブロッコリーは、軸の部分が廃棄されています。廃棄されている原料を乾燥させ、当社で微粉末加工することで再利用化が可能となります。
【メリット①:粉末化による用途の拡大】
生原料の場合は、調理加工をおこなうか、生で食べるか、用途が限られます。またブロッコリーの場合は冷蔵保存が基本となり、賞味期限も短くなります。粉末加工前に乾燥をおこなうため日持ちがし、常温保管が可能となります。運搬性や賞味期限の向上により加工工場でのハンドリングもしやすくなり、製麺・製菓・製パンなどの生地に混ぜ込んだり、粉末青汁原料へ混ぜ込んだり、打錠することでサプリメントなどにも活用できます。
【メリット②:栄養成分の濃縮】
「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にするとブロッコリー(生)の栄養成分の約86%は水分です。続いて炭水化物が6.6%、タンパク質が5.4%、その他1.4%です。廃棄部分原料を乾燥させ粉末化させた場合、水分値は約5%以下になります。水分損失を考慮し、ブロッコリー軸の粉末品の栄養成分を換算値を下表に示します。
栄養成分 | 生原料 | 粉末品 |
---|---|---|
水分値 | 86.0% | 5.0% |
炭水化物 | 6.6% | 48.6% |
タンパク質 | 5.4% | 36.6% |
脂質 | 0.6% | 4.1% |
その他 | 1.4% | 9.5% |
水分が抜けることで栄養成分が濃縮され、栄養価の高い粉末を生成することが可能です。
メリットがある一方で、加工するにあたり考慮すべき注意点もあります。
【注意点①:微生物コントロール】
食品に関する明確な基準値は定められていませんが、ほとんどの食品関連企業では「粉末清涼飲料」の基準に着目し、微生物規格を定めています。
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ブロッコリーのような生鮮野菜の場合、洗浄過程がなく、適切に保管されていない場合、「一般生菌数:10,000/g 以上、大腸菌群:陽性」のケースが多いです。一般生菌は熱に弱いものが多いため乾燥工程などの加熱処理が有効ですが、過剰な加熱は野菜本来の品質を下げる恐れがあり、加熱処理で減菌できる範囲には限度があります。また土壌菌など耐熱性菌も存在するため殺菌方法として加熱処理が万能なわけではありません。
そのため、原料の時点で増菌させないように「適切な保管温度」「衛生的な保管場所」「適切な洗浄」が必要となります。これまで廃棄していた原料を活用する場合、「廃棄品(≒ゴミ)」ではなく「加工原料」として扱う意識の変化も必要です。
【注意点②:製品の回収率と加工コスト】
一例のようにブロッコリーを乾燥・粉末加工した場合、水分損失は約81%となります。加工ロスを考慮すると、製品回収率は約15%程度です(生原料100㎏を加工した場合、製品として回収できるのは15㎏程度)。
したがって、水分損失前(≒生原料)の状態で長期運送をおこなうと、損失する水を運んでいることと同じため、製品コストが大幅に上がってしまいます。また生原料は冷蔵・低温保管が必要ですが、乾燥品であれば常温保管が可能です。できる限り生産地の近くで乾燥化し、加工をおこなうことがポイントとなります。
当社の微粉砕加工の詳細については、微粉砕ページをご覧ください。
現在は、「奈良工場」「旭川工場」にて微粉砕ラインを所有しています。受託加工をご依頼の場合、原料特性や加工数量、微粉砕前の加工を考慮し、それぞれの工場へとご案内させていただきます。ご興味がある方は、是非お問い合わせフォームよりご相談ください。