微粉砕コラム

CRUSHED COLUMN

果物パウダー(純度100%)の加工が難しい理由

野菜パウダーや果物パウダーを目にする機会が多くなり、当社へも微粉の受託加工依頼をいただくことがございます。当社で微粉砕の受託加工をお受けする場合、基本的には乾燥品のみご対応しています。生野菜からの加工をご依頼されることもありますが、現在「洗浄工程・乾燥工程」設備を所有していないため、弊社での対応は出来かねます。他社乾燥メーカー様をご紹介し、乾燥処理を経てから当社へご依頼いただけるようにご案内しています。
また生野菜や果物の90%以上が水分のため、粉末回収量の低さに驚かれることも多々ありますが、糖度の高い野菜や果物については、乾燥工程に配慮が必要なため、さらに加工費用がかかります。なぜ糖度が高いと加工が難しくなるのか、弊社ではどのようなケースであればご対応可能か、その理由についてご紹介していきます。

 

【野菜パウダーの主な加工方法と糖度の高い果物・野菜の場合】

しょうがパウダーイメージ

糖度が低い人参やブロッコリー、ほうれん草などの生野菜を粉末加工したい場合、一般的には「洗浄→スライス→乾燥」の工程を経て、微粉末加工をおこなうことが多いです。糖度の低い野菜の場合、十分に乾燥されていれば微粉末加工が可能で、平均粒度20μm程度まで細かくすることが可能です。しかし、糖度が高い果物やにんにくなどの野菜は、微粉末時に機械内部で練ってしまったり、ペースト化してしまうことが多々あります
当社でも過去に、ドライフルーツ(パパイヤ/マンゴー/バナナ/ビーツなど)の受託加工の依頼があり、微粉砕試作をおこなったことがありますが、微粉末化できてもダマになってしまい、冷凍保管が必須のため、現状では商品化が困難となり、乾燥方法の見直しが必要となりました。またにんにくを加工した際は、乾燥条件(温度・乾燥方法)の違いにより、粉末可能であったもの、機械内部で練ってしまいペースト化してしまったもの、と結果が変わりました。

糖度の高い果物や野菜のみの加工とせず、デキストリンなどの賦形剤と混ぜて加工した場合、微粉末化することは可能です。しかし、純度100%の粉末化を希望する場合は適さないため、製造工程を工夫する必要があります。

【ダマの原因について】

糖度の高い果物や野菜を粉末加工できても、保管時にダマになってしまう場合があります。糖が多く含まれる粉末の場合、ダマになる主な原因は「水分活性」と「温度」です
川井清司 :糖質の物理的性状変化の解明と食品における利用 応用糖質科学 第 10 巻 第 1 号 24―28 (2020)」より、果物粉末の固着(ダマ)について解説されています。論文によると、固体は結晶質と非晶質に大別されています。粉末食品は非晶質を含むものが多く、温度や水分含量の変化によって粘弾性が現れ、粉末が固着しやすくなります。果物粉末の場合、粘弾性が現れる温度帯がより低く、粉末としての取り扱いは非常に困難である言われています。粉末品として常温流通させたい場合、粉末品の水分活性を下げる必要があり、乾燥工程が重要となります

水分活性とは
水分活性(Aw:Water Activity)とは、食品中の自由水の割合を表す数値のことです。食品中にはタンパク質、炭水化物等と結合した「結合水」と移動が容易な「自由水」が含まれています。食品中で微生物が繁殖するには自由水が不可欠であり、自由水が少ないほど微生物の増殖が抑制されます。そのため水分活性が0に近づくほど、食品の保存性が高くなります。

 

【乾燥方法の種類について】

野菜や果物など農産物の乾燥方法にはいくつか種類があります。

自然乾燥 太陽光や風で自然乾燥させる方法。自然の力を利用しているため非常に安価だが、乾燥時間が長すぎるため、品質劣化がおこりやすい。
熱風乾燥 熱風の温度を調整し、乾燥させる方法。高温の場合は短時間で乾燥が可能だが品質劣化がおこりやすい。
低温乾燥の場合は品質劣化がおこりにくいが、乾燥時間がかかる。
噴霧乾燥
(スプレードライ)
原料を液体化、噴霧させて乾燥する方法。乾燥時間が短く、品質劣化は少ないが、粉末品での回収となる。
液体の粘度が高くなると噴霧が難しいため、粘度が高い場合は賦形剤の添加が必要となる。
真空乾燥
(フリーズドライ)
凍結した原料を真空下で乾燥させる方法。品質劣化はおこりにくいが、加工費用が非常に高い。
食品中の水分を昇華させるため、水分が抜けたところは空洞となり(スポンジ化)、乾燥品は脆く壊れやすい。

 

  • 自然乾燥イメージ

    自然乾燥イメージ

  • 熱風乾燥イメージ

    熱風乾燥イメージ

  • 真空乾燥イメージ

    真空乾燥イメージ

市販のドライフルーツの場合、自然乾燥熱風乾燥で製造されているものがほとんどです。通常、食品の表面から水分が抜けていきますが、加熱によりタンパク質の変性が起こると、深層部の水分(自由水)まで抜くことは難しくなります。そのため、一般的なドライフルーツの水分活性は0.6~0.7です。一方、フリーズドライで製造した場合、水分を昇華させ、深層部まで水分(自由水)を抜き取っているため、種類により異なりますが、水分活性は0.1に近いと言われています。そのため、最も水分活性が低くなる乾燥方法であるフリーズドライが、糖度の高い果物やにんにくなどのパウダー化に適した乾燥方法となります
山﨑敬子他 :栃木県産イチゴを利用した調理加工品の開発(2)イチゴパウダーの製造法の検討 研究紀要_29号_05(2018)」によると、イチゴパウダーの場合は「イチゴの3mmスライス品を40~50℃で48時間熱風乾燥」の条件下では、粉末加工が可能であったと報告されていました。フリーズドライ製法以外でも粉末化は可能ですが、低温乾燥の場合は乾燥時間がかかるため、乾燥加工費用はやや高くなります

 

過去の試作結果より、果物やにんにくなどの糖度が高い農産物に関しては、上記の通り、フリーズドライ乾燥品低温熱風乾燥品などであればご対応が可能です。また、比較的糖度の低い果物皮(乾燥品)やジュースやワイン搾汁後の乾燥物であれば、粉末化が可能なケースが多いです
原料の状態にもよるため、製造可否の判断については、原料サンプルの確認、試作テスト後におこなっています。ご興味がございましたら、お問い合わせフォームよりご相談ください。

コラムの監修者

岡本彩

岡本彩

京都グレインシステム株式会社 経営企画室
管理栄養士/ウェブ解析士

入社から3年間は営業部に所属し、育児休業を経て、経営企画室に異動・立ち上げをおこないました。管理栄養士の知識を活かし、当社の加工内容や商品、関連情報をご紹介します。

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