微粉砕コラム

CRUSHED COLUMN

乾燥粉砕ラインのご紹介

微粉砕機には、気流粉砕式やジェットミル式、ピンミル式、ボールミル式などさまざまな種類があります。当社ではピンミル式と気流粉砕式の微粉砕機を所有していますが、工場見学に来られたお客様は「乾燥粉砕機」に興味を示されることが多々あります。「乾燥粉砕機」とは、熱風を加えながら原料の微粉砕(気流粉砕)をおこないます。所有しているところが企業が少なく、さらに当社仕様に改造しているため、オリジナル性の高い設備です。今回は「乾燥粉砕機」についてご紹介していきます。

 

【乾燥粉砕機とは】

当社で所有している乾燥粉砕機とは、熱風を加えながら原料を粉砕させ、乾燥と微粉砕が一体となった設備です。原料を投入後、粉砕室では高速旋回気流中で原料粒子が相互衝突し、微粉砕されます。原料の微粒子化により表面積が増え、バーナーで加熱された熱風により瞬間的に乾燥されます。乾燥によって粉砕されやすくなり、さらに微粒子化が進行します。微粒子化と同時に乾燥が進行するため、原料の投入から乾燥、微粉末化されて製品が排出されるまでに要する時間は1秒程度です。ほとんどのケースでは、100℃以下の低温乾燥となるため、熱による成分の変質や劣化を最小限に抑えることが可能です。

■加工例

乾燥粉砕機を用いた場合、原料の乾燥+微粉砕加工を同時におこなうことが可能です。原料の種類や形状にもよりますが、乾燥工程不要でパウダー加工することも可能です。パセリやバジルなどの葉物野菜で試作した場合、生原料を投入後、数秒でパウダー化させることが可能でした。加熱時間が短いため、原料由来の鮮やかな色を保った粉末品の回収が可能です。同様に、茹でた枝豆を乾燥粉砕機で試作した場合、味・風味・色味の優れた枝豆パウダーが回収できました。試作例については、下記画像をご参照ください。

  • パセリ乾燥粉砕試作品イメージ

    パセリ乾燥粉砕試作品イメージ

  • 枝豆乾燥粉砕試作品イメージ

    枝豆乾燥粉砕試作品イメージ

  • 乾燥ゆず皮乾燥粉砕試作品イメージ

    乾燥ゆず皮乾燥粉砕試作品イメージ

その他、乾燥野菜やきのこ、乾燥した果物の皮などの加工もおこなっています。加熱温度が100℃以下かつ数秒程度の加熱ですが、一般生菌に対する減菌効果があり「減菌+微粉砕」目的で乾燥粉砕機で加工をおこなうケースもあります。そのため、受託加工等で生原料での加工をご希望される場合、原料状態での微生物コントロールが必要となります。コントロールが難しいケースが多く、実製造では乾燥品原料を微粉末化するケースが多いです。

 

【乾燥粉砕機のメリット】

①乾燥と粉末を同時にできる

熱風を送り込みながら微粉砕加工をおこなうため、原料や形状によっては乾燥工程不要で当設備1台でパウダー化が可能となり、工程の省略ができます。

②栄養成分が壊れにくい

バーナーで温めた熱風を微粉砕機内部に送り込んでいるため、ほとんどのケースでは乾燥温度は100℃以下、粉砕時間は0.5~数秒程度のため低温乾燥となります。そのため、熱による成分の変質や劣化を最小化することができます。食品の栄養成分にはビタミン類など熱に弱い成分も多く、加熱時間が短いほど栄養成分が分解されずに残る可能性が高いです。また緑色色素であるクロロフィルは熱に弱く、長時間の加熱により変色してしまいます。乾燥粉砕機を使用した場合は栄養成分が破壊されにくく、味、風味、色味の優れた粉末品の回収が可能となります。

③一般生菌に対する減菌効果が期待できる

乾燥温度が80℃以上の場合、一般生菌に対する減菌効果が期待できます。生鮮野菜の場合、洗浄過程がなく適切に保管されていない場合、「一般生菌数:10,000/g 以上、大腸菌群:陽性」のケースが多いです。適切な処理・管理されていない原料を低温乾燥した場合、微生物が死滅しきれておらず、乾燥品であっても微生物値が高いケースもあります。乾燥粉砕機を用いた場合加熱時間が短いため、「大腸菌群」や「カビ・酵母」に対する殺菌効果は乏しいですが、「一般生菌」は熱に弱いものが多いため、減菌効果が期待できます

④衛生的な加工ができる(分解洗浄)

乾燥粉砕機は分解+水洗いが可能なため、各種製品を製造毎に分解洗浄しているため衛生的です。また、原料の投入+微粉砕する部屋と粉末品を回収する部屋自体が分かれているため、製造時の汚染リスクが低くなるように配慮しています。

 

【乾燥粉砕機の留意点】

殺菌効果について 乾燥温度が80℃以上の場合、一般生菌に対する減菌効果は得られますが、加熱時間が短すぎるため、大腸菌・大腸菌群やカビ・酵母に対し、十分な効果を得ることは難しいです。そのため、原料の時点で微生物値を抑える必要があります。原料を適切に洗浄すること、適切な温度で管理すること、微生物の増殖を防ぐため水分値を下げること、を推奨しています
原料水分値の影響 原料の種類や形状にもよりますが、原料水分値が高すぎるものは、原料投入口に張り付いてしまったり、機械内部でのべたつきや焦げにつながるため、機械との相性が悪いです。過去の試作事例では、レーズンやトマトなど水分値と糖度が高いものは、原料のみでは粉末化できませんでした。また酒粕の場合は、使用している原料や製法、水分値の高さにより加工有無が変動しました。
製品の回収率と加工コスト 原料の種類や形状にもよりますが、乾燥粉砕機の日産処理量は500㎏程度です。製品の製造後には機械を分解・洗浄後、再度元の形へ組み上げ、試運転をおこないます。大型の機械のため、分解洗浄+組み上げには2日間を要します。少量製造・大量製造に関わらず、分解洗浄・組み上げの手間は変わらないため、生産数量が多くなるほど加工単価が安くなります
また原料の水分値が高いほど、乾燥粉砕後の水分喪失が多く、原料の回収量が少なくなります。一般的な野菜の水分量は90%以上あるため、生野菜100㎏を加工した場合、製品として回収できるのは10kg未満となります。加工費は処理した原料に対してかかるため、生産数量が多くなるほど加工単価が下がります。最終商品の販売価格や製品原価によっては、通常の「乾燥」+「微粉砕機」の加工方法が適している場合もございます。

 

試作のご依頼や受託加工のご相談については、お問い合わせフォームより承っています。お気軽にお問い合わせください。お問い合わせ

コラムの監修者

岡本彩

岡本彩

京都グレインシステム株式会社 経営企画室
管理栄養士/ウェブ解析士

入社から3年間は営業部に所属し、育児休業を経て、経営企画室に異動・立ち上げをおこないました。管理栄養士の知識を活かし、当社の加工内容や商品、関連情報をご紹介します。

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