アルファ化米粉がミックス粉に使われる理由/吸水性の比較検証
米粉ブームに合わせてか、当社への「蒸し乾燥」や「アルファ化」に関するお問い合わせが増えてきました。特に「アルファ化米粉」の特徴やなぜミックス粉に使われるのか、その理由についても聞かれることがございます。
今回は米粉研究家の方へのインタビュー内容と合わせて、米粉パンと小麦粉パンの違いや製パンにおけるアルファ化米粉の役割についてご紹介します。
【米粉パンと小麦粉パンの違い】
グルテンフリー志向や小麦粉価格の高騰で米粉パンの人気が高まっていますが、小麦粉パンとは特徴が異なるため、米粉を用いたパンの製法には注意が必要です。特に異なる4点をご紹介します。
①グルテンフリー
小麦粉に約50%の水を加えてこねると、粘弾性のある塊になります。小麦粉に含まれるタンパク質の約85%は水に不溶性のグリアジンとグルテニンです。グリアジンとグルテニンに水を加えてこねると粘弾性のある「グルテン」が形成されます。グリアジンは水を加えると粘着力が強く糸状に伸びる性質があり、グルテニンは弾性の強い塊になります。この両者が引き合って網目構造を作り、グルテンを形成します。
米粉のタンパク質にはグリアジンとグルテニンがなく、グルテンを形成することができません。そのため米粉パンは水を加えてこねた時に粘りが出にくく、工夫が必要です。
②もちもち感
上記の通り、米粉ではグルテンが形成されません。しかし米粉は吸水しやすいという特徴があります。また米粉のデンプンはアミロースとアミロペクチンに大別され、アミロペクチンが多いと粘りが強くなります。米粉の吸水性の高さとアミロペクチンの粘り気により、お餅のようなもちもち感が形成されます。
③水分量とこね時間
米粉は水をよく吸水しますが、お米の種類や米粉のデンプン損傷度などが影響し、米粉により吸水率が異なります。また加水してからこねてもグルテンが形成されないため、米粉を使用したパンの方がこね時間が短くなります。水分量やこね時間に注意が必要です。
④発酵時間と焼き色
米粉パンの場合、小麦粉パンよりも発酵スピードが早く、膨らみ度合は低いと言われています(生地が2倍まで膨らまず、1.2~1.5倍程度)。また米粉パンの方が小麦粉パンに比べて焼き色が付きづらいという特徴があります。過度に焼きすぎると水分が蒸発しすぎてしまい、パンが硬くなりやすいため適切な焼成時間の検証が必要です。
【アルファ化米粉がミックス粉に使われる理由】
米粉パンの場合、小麦粉パンに比べてもちもちとした食感のパンになります。一方グルテンがないため高さが出づらく、米粉100%では成型パンの製造は難しいです。そのため、グルテンの機能を補うため、下記原料を添加されるケースが多いです。
■グルテンの代替素材
①サイリウムハスク/サイリウムパウダー | オオバコ属のプランタゴ・オバタという植物の種子の殻を粉末状にしたものです。サイリウムは食物繊維の一種で、水分を吸収してゲル状になる性質があります。米粉にサイリウムを添加することで、成型パンの製造も可能となります。 ※摂取しすぎるとお腹が緩くなるため、摂取量上限値が定められています。 |
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②加工デンプン | 加工デンプンは、食感や物性改良などを目的として使用される食品添加物で、加工目的・用途別に複数種類あります。製パン適性の高い加工デンプンが用いられています。 |
③増粘多糖類 | 増粘多糖類とは水溶性の多糖類で高い粘性を持っています。カラギーナンやキサンタンガムなど複数種類あり、原料由来により特性が異なります。製パン原料では複数種の増粘多糖類を組み合わせ、保水性やしっとり感、食感などを向上させる目的で使用されています。 |
④アルファ化米粉 | アルファ化米粉とは、「炊飯された米を加熱により急速乾燥させたアルファ化米を製粉した米粉」と定義づけされています。吸水性、粘性が高いという特徴があり、米粉パンに添加するとふんわり感や高さがキープできます。増粘剤の代替として使用されており、原料がお米であるため100%米粉パンとして謳うことが可能です。 |
■検証:アルファ化米粉の吸水性
アルファ化米粉の吸水性の高さについて、一般的な米粉と比較・検証しました。
一般的な米粉と当社のα化米粉パウダー、α化発芽玄米パウダーに水を加えたところ、下図のようになりました。
α化米パウダーが最も吸水性が高く、少量の水で混ぜるともちもちとしており、粘弾性が高かったです。続いてα化発芽玄米パウダーの吸水性が高く、粘弾性がありました。一般的な米粉は少量の水を混ぜてもさらさらしており、α化品に比べると吸水性は弱かったです。
【検証した米粉の特徴】
比較品 | 一般的な米粉 | α化米パウダー | α化発芽玄米パウダー |
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原料 | 精白米 | 精白米 | 玄米 |
製法 | 微粉砕のみ | 吸水 蒸し乾燥 微粉砕 |
吸水 蒸し乾燥 焙煎 微粉砕 |
【関連情報】
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当社では一般的な米粉(生米をパウダー加工したもの)は製造しておらず、加工米(蒸し乾燥米や焙煎米)をパウダー加工しています。残念ながら弊社ではレシピ開発をおこなっていないため、レシピ開発のお手伝いは難しい点をご了承願います。
在庫がある場合はサンプルのご送付も可能ですので、当社米粉にご興味のある方は下記フォームよりご相談ください。(誠に恐れ入りますが一般消費者の方へのご送付は出来かねる点をご了承願います。)