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食品の加熱処理の豆知識
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焙煎の特徴とメリット

焙煎の特徴とメリット

焙煎というのは、英語では「roast」、「dry roasting」と呼ばれる加熱処理方法の一つです。
家庭でもゴマや大豆などをフライパンで加熱するという調理をすることがあります。
家庭の場合は、「炒る」、「煎る」という漢字を当てます。
両者の処理方法に大きな差はありませんが、「煎る」という方が「炒る」よりもより強い加熱処理、すなわち、焦がすような意味合いが強くなるということです。
焙煎という言葉に使われている「煎」という漢字の意味を踏まえると、焙煎はどちらかというと焦がすという意味が強い加熱処理方法であると言うことができるのかもしれません。

焙煎とは
焙煎という加熱処理は油や水といった熱媒体を使わずに食材を加熱する方法であり、焙煎処理によって食材に含まれる水分が蒸発するとともに香ばしい風味が付与されることになります。
他にも、食品に含まれるたんぱく質やでんぷんなどの炭水化物等が加熱中の熱エネルギーによって化学反応を起こすことによって性質が変化し、食品の風味や香味が変化するということもあります。

 

焙煎される食材は?
焙煎という熱処理は、冒頭でゴマや大豆などを例に挙げているように穀物や種実を食べるための調理方法の一つとして利用されているものもありますし、コーヒー豆、カカオ豆、あるいは茶葉といったそのままでは食材として適さない食材を食すことができるようにする熱加工方法として利用されるときもあります。
味や風位を生み出す目的で焙煎加工する食材は、焙煎処理の温度や加熱時間を間違えて焦げすぎると苦みが強くなりすぎるため、加工済みのものを購入するケースが多いというのが一般的です。
しかし、焙煎処理は家庭にある調理器具でもできますので、ゴマのように生でも食べられる食材は自分の好みに合わせて自宅で加減しながら焙煎する人もおられます。
麦茶やほうじ茶に使う焙煎した大麦や茶葉も風味をアップさせる目的で、抽出する直前に市販品を再度焙煎することもあります。
近年では、家庭用のコーヒー豆の焙煎器も販売されており、生のコーヒー豆を自分の好みに合わせて自分で焙煎するという場合もあるようです。
焙煎処理される食材の主だったものは以下の通りです。
  • 米(玄米)、大麦、大豆などの穀物類
  • ピーナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ゴマ、銀杏などの直接食べる種実類
  • コーヒー豆やカカオ豆などの食品原料となる種実類
  • 茶葉

 

焙煎中に起こる反応とポイント
焙煎という加熱処理では、焙煎温度、品温、加熱時間、冷却時間は重要なファクターです。
さらに、焙煎中はすべての食材に均一に熱がかけられていることが重要になってきますので、混合状態も重要な条件の一つです。
食材や目的によって焙煎温度や時間は変わってきますが、基本的には食材を焦がすことによって香ばしさを付加するとともに香気成分を際立たせることになります。
焙煎に関する温度管理は公開されている情報が少なく、各食品メーカーのノウハウが詰まっています。
しかしながら、焙煎した食品の品質を良い状態で安定に生産するためには、温度の上昇と常温に戻すための冷却を素早く行い、加熱時間をコントロールすることが大切になってきます。
焙煎温度が高すぎると、焦げすぎて苦みが強くなったり色が濃くなりすぎたりするということもあります。
また、食材の品温が高い間は常に揮発成分が気化することになりますので、理想的な状態で焙煎が終了しても冷却に手間取ってしまうと必要な香気成分がなくなってしまう可能性もあります。
従って、短時間で目的温度に到達させ、焙煎時間が終了した時点で素早く常温に戻すために、食材を傷つけないようにしながら効果的に撹拌するシステムが重要になってきます。

 

代表的な食材における焙煎にはどのような特徴があるのでしょう!
米や大麦などの穀類、焙煎無しに利用することがないコーヒー豆やカカオ豆、さらには、条件に注意が必要な油分の多いナッツ類などについて、それぞれの食材における焙煎という加熱処理の特徴を解説したいと思います。

 

●玄米茶
玄米茶の歴史は鏡開きの時に発生した乾燥したもちの屑を炒って茶葉に混ぜてお茶を入れたのが始まりで、焙煎した玄米の香ばしい香りと味が玄米茶の決め手となると考えられています。
近年は、茶葉として煎茶を用いる場合もありますが、本来は規格外の茶葉や番茶などの少し質が落ちる茶葉をおいしく飲むために玄米茶にして飲むようになりました。
加えられる焙煎米は玄米、白米、もち米が用いられることが多いようですが、蒸した米をキツネ色になるまで焙煎して茶葉と混合したものが玄米茶として市販されています。
玄米茶の味と香りは焙煎した米に依存するところが大きいとされています。
焙煎した米が爆ぜたものが混じっているものもあります。
弊社ではもち玄米を膨化させて花という名前で販売していますが味には特に影響が無いので、見た目の華やかさから製茶メーカーで使われています。

 

●麦茶
茶という名前はついていますが茶葉は一切含まれておらず、焙煎した麦をそのまま煮出して飲料とするのが麦茶です。
歴史的には、平安時代の上流階級の間で流行した「麦湯」に遡ります。
初夏に収穫される新鮮な大麦を焙煎した後に抽出される麦湯は味も香りも良く、夏場の定番として愛飲されています。
保存状態にもよりますが、晩夏に古くなった麦茶は香りが落ちているということもあり、抽出前にフライパンなどで軽く炒って香りを付加して飲むご家庭もあるそうです

 

●大豆(きな粉)
大豆を焙煎した後に、皮をむき、微粉末に粉砕した粉です。 きな粉の名前の由来は「黄なる粉」ということで、焙煎によってついた色がもととなっています。
ただし、原料を大豆から、青大豆、黒豆、枝豆と変えることによって出来上がるきな粉の色合いや風味は変わってきます。
青大豆を原料にして造られるきな粉は「青きな粉」、「うぐいすきな粉」や「うぐいす粉」と呼ばれ、ウグイス色の粉になります。
さて、きな粉の製造における焙煎の意味は色の調整だけではなく、生の大豆が持つ青臭さが抜け、焙煎することにより香ばしい香りと甘みが付与されます。
大豆粉特有の臭みは大豆が持つ酵素反応によって発生しますが、焙煎することによって酵素が失活し臭いの発生を防ぐことにつながります。
焙煎中の品温に対する温度は公開されていませんが、焙煎方法は様々な方法があるようです。
酵素の失活だけであれば高温は必要ありませんし、逆に温度が高すぎると黄色い色が褐色に近づくことになります。
何よりも、焙煎条件が強すぎると大豆に期待されるイソフラボンも変性してしまいます。

 

●ビール(麦芽)
ビールの琥珀色のもとになっているものが、麦芽(モルト)を焙煎してできる褐色の色素です。
水に浸漬して根が生えてきた状態の大麦に熱を加えて発芽を止めて熱風乾燥させたものが麦芽と呼ばれるモルトはビールやウイスキーの主原料です。
発芽した大麦への加熱の主目的は発芽の進行を止めるためですが、発芽を止めるだけであれば焙煎と呼ばれる高温処理まで加熱する必要はありません。
しかし、実際には、麦芽の熱風乾燥で起こる褐変反応、いわゆる、焦げ具合によって、出来上がるビールの色が大きく変化します。
ピルスナーのような淡色ビールは焙煎条件を抑えた麦芽を用い、スタウトのような色が濃く香味の強いビールは黒くなるまでローストした麦芽(あるいは大麦)が使用されます。
色の濃い麦芽(大麦)と色の薄い麦芽との混合によって、各種ビールの色と味わいが決定されているというわけです。

 

●コーヒー
近年では、生のコーヒー豆を焙煎せずに淹れる「グリーンコーヒー」というものもあるようですが、一般的には、生のコーヒー豆を焙煎してから粉砕したものをお湯で抽出した飲み物がコーヒーと呼ばれる飲料です。
コーヒー豆の焙煎品温は230℃から250℃と高温で焙煎するのが一般的ですが、近年では高温加熱によってコーヒー豆に含まれる健康成分が失活するということから焙煎しないグリーンコーヒーがちょっとしたブームになっているということです。
コーヒー豆の焙煎では、浅煎り、中煎り、深煎りというように焙煎の程度がコントロールされています。
これはコーヒー豆の種類によって酸味や渋みといったコーヒー特有の味わいを生み出す成分の含有量が異なっており、熱による成分の変化や揮発をコントロールするとともに抽出した際の苦みを付加することを目的とするものです。
もちろん、コーヒー豆の種類によって味わいが異なりますので、使用するコーヒー豆の味わいがどの程度の焙煎に適しているのかによってコントロールされているようです。

 

●チョコレートやココア
収穫した後に一週間ほど発酵させて、天日乾燥させたカカオ豆を焙煎したものが原料となります。
焙煎品温は110℃から150℃と比較的低く、焙煎に伴う焦げた苦みは少ないということができます。
チョコレートの持つ苦みは、テオブロミンという苦み成分に依存しています。
焙煎したカカオ豆を洗粉砕した後に外皮や胚芽といった雑味を生み出すもととなる不要物を除去し、摩砕機で100μm程度まですりつぶしたものがカカオパウダーと呼ばれるチョコレートやココアの原料となる食材です。
カカオ豆は多くの脂質を含んでいるため、高温で焙煎すると脂質が酸化することから焙煎品温を抑えることになります。

 

●ほうじ茶
日本茶の茶葉は乾燥して揉む前に、酸化と発酵を防ぎ抽出効率を上げるために加熱します。
通常は蒸すという加熱方法になりますが、釜炒り茶といって鉄製の釜や鍋で炒るというものもあります。 九州の嬉野茶は釜炒り茶として有名な日本茶の一つです。
茶葉の加熱処理で焙煎処理が有効になるのは、ほうじ茶の製造です。
ほうじ茶は、若葉を用いる煎茶とは異なり、成長した葉を原料とする番茶が原料となるケースが多くなっています。
葉が成長しすぎているためタンニンが多くなっていますので、焙煎することにより渋みを抑え香ばしさを付加したお茶がほうじ茶ということになります。
家庭では古くなって風味が低下した茶葉を焙じて利用するという場合もあるようです。

 

●ナッツ
アーモンドをローストするイメージが強く、ナッツはどんなものでも焙煎加工するようなイメージがあります。
しかし、ナッツそのものは生でも食べることができるものもあるくらいで、乾燥する程度の加熱で大丈夫なケースがほとんどです。
ただし、種実類という別名からもわかるように、特有の青臭さや好ましくない風味を伴うことが多く、不要な雑味を除き香ばしさを加えるために油で揚げたり焙煎したりすることが多くなります。
ナッツ類の焙煎は、カカオ豆とコーヒー豆の間の170℃から180℃程度の品温が良いと言われています。
ナッツ類は脂質を含んでいるものが多く、あまり高温で焙煎すると油が酸化する可能性もありますし、必要な風味が飛んでしまうこともあるのかもしれません。

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